Wikipediaで調べものをしていたはずなのに、気づけば最初とまったく関係のない記事を読んでいた。
私はよくあります。そこで、その「脱線」だけを遊びにしてみました。
ルールは簡単です。毎月、Wikipediaの記事をひとつ出発地点に選び、その記事の中から気になったリンクを1日2回だけたどります。それを毎日続けます。
私はこれを「Wikiトリップ」と呼んでいます。
2026年6月10日に「ビットコイン」から出発し、6月、7月、8月の3か月間続けました。通過した記事は延べ165記事、リンクを移動した回数は162回です。
最初に結果だけを書くと、3か月の旅はこうなりました。
| 月 | 出発 → 到着 | 記録 |
|---|---|---|
| 6月 | ビットコイン → バンジョーとカズーイの大冒険 | 43記事・42移動 |
| 7月 | ダフト・パンク → 世界ラリー選手権 | 61記事・60移動 |
| 8月 | スバル・BRZ → カシオ計算機 | 61記事・60移動 |
ビットコインから、バンジョーとカズーイの大冒険へ。
ダフト・パンクから、世界ラリー選手権へ。
スバル・BRZから、カシオ計算機へ。
出発したときには、どの到着地点もまったく予想できませんでした。
始めたきっかけ
きっかけは、ゆる言語学ラジオの水野太貴さんが、辞書を毎日1ページずつ読んでいると話していたことでした。その楽しみ方が面白く、私はWikipediaでやってみることにしました。
ただ読むだけでもよかったのですが、毎日続けたら一本の道になるようなルールを加えることにしました。それが「毎日2クリック」です。
当時、Xのプロフィールにはこう書きました。
Wikipediaを毎日2クリック。その月の自分から歩き始めます。どこへ辿り着くのか、自分でもわかりません。
出発地点には、その月の自分が関心を持っている記事を選びます。そこから先は、目標を決めず、その日に気になったリンクを2回だけ選びます。
知識を効率よく得るためでも、何かの答えを見つけるためでもありません。Wikipediaの中を興味のままに歩いたら、1か月後にどこへ着くのか。それを確かめる遊びとして始めました。
Wikiトリップのルール
今回のルールは次のとおりです。
- 毎月、Wikipediaの記事をひとつ出発地点に選ぶ
- 記事内にあるリンクから、気になったものを選ぶ
- 1日にたどるリンクは2回だけ
- 前日の到着地点から翌日も再開する
- 最短経路やゴールは決めない
「ランダムなリンクを押す」のではありません。
リンク先は、毎回自分で選びます。ただし、最終的にどこへ行くのかは決めません。その瞬間に少しでも気になった言葉を押すだけです。
この「自分で選ぶけれど、行き先は決めない」という半端な自由さが、Wikiトリップの面白いところです。
3か月の旅を振り返る
ここでは各月の移動を大まかに振り返ります。選んだリンクや印象に残った記事の詳しい話は、今後、月別の旅行記としてまとめる予定です。
6月:ビットコインから「バンジョーとカズーイの大冒険」へ
最初の旅は、2026年6月10日に始めました。
出発地点は、当時関心のあった「ビットコイン」です。
ビットコインから認証や偽札へ進み、通信、携帯電話、カメラ、半導体へ。そこから電磁気学、機械学習、インターネットへ移動し、最後はゲームの世界に入りました。
大まかにまとめると、次のような旅です。
ビットコイン → セキュリティー → お金 → 通信 → 携帯電話 → カメラ → 半導体 → 物理学 → AI → インターネット → ゲーム
「ビットコイン」と「バンジョーとカズーイの大冒険」だけを見ると、何の関係もありません。しかし、間をひとつずつ見ると、すべてWikipediaの記事内リンクでつながっています。
7月:ダフト・パンクから「世界ラリー選手権」へ
7月は「ダフト・パンク」から出発しました。
前半は、かなり素直です。フレンチ・ハウス、ジャスティス、リミックス、ディスクジョッキー、Technics SL-1200、ディスコ、テクノと、自分の好きな音楽の周辺を歩いています。
そこから電子楽器、Logic Pro、Apple、iPhoneへ進み、CarPlayとカーナビを経由して、GPS衛星、ロケット、スペースXへ。さらにxAI、Grokipediaを経て百科事典へ入り、文字、フォント、万年筆へと方向が変わります。
さらにヨーロッパの地理から北極圏、大雪山、旭岳へ進み、訪れたことのある東川町へ。最後はスキー、自転車、オフロード、ラリーと進み、「世界ラリー選手権」に到着しました。
音楽 → 楽器 → Apple → カーナビ → 宇宙 → xAI・Grokipedia → 百科事典・文字 → ヨーロッパ → 北極圏 → 東川町 → スキー → ラリー
宇宙まで広がった旅が、最後には訪れたことのある場所や、車への興味に戻ってきました。
8月:スバル・BRZから「カシオ計算機」へ
8月の出発地点は「スバル・BRZ」です。
最初はスバルのエンジンや車種をたどり、マニュアルトランスミッション、半クラッチ、トルク、工具へ進みました。
工具から産業革命、社会学、都市化へ移り、家賃、マンション、都市計画、駐車場へ。ショッピングセンターと映画館を経由し、ポップコーンからトウモロコシ、稲、農業機械へ入ります。
そこから消防車、建設機械、タイヤ、エンジンオイルへ進み、2ストロークエンジン、ホンダ・NSR500、加藤大治郎、鈴鹿サーキット、シケインへ。聞き慣れた「カシオトライアングル」の名前から、最後はカシオ計算機に着きました。
BRZ → 自動車 → 工具 → 産業革命 → 社会 → 都市 → 映画 → 農業 → 建設機械 → エンジン → バイクレース → カシオ
こうして8月は、車から社会や農業を大きく回り、再びモータースポーツへ。最後はカシオ計算機で終わりました。
3か月続けて分かったこと
知識は広がっていくのに、興味は自分へ戻ってくる
Wikipediaには無数の記事があります。理屈の上では、どこへでも行けます。
しかし実際には、興味のないリンクをわざわざ押すことはありません。
そのため、自由に歩いているつもりでも、何度も自分の好きな分野へ戻ってきます。
7月はダフト・パンクから宇宙や文字、北極圏まで行きました。それでも最後は、訪れたことのある東川町を通って、好きな車の世界へ入りました。
8月もBRZから社会学や農業へ離れましたが、やがてエンジンとモータースポーツへ戻っています。
興味は無限に広がるように見えて、実際にはその人らしい範囲へ収束していく。3か月の履歴には、自分の趣味嗜好がかなりはっきり表れました。
Wikipediaの記事より「記事と記事の間」が面白い
Wikiトリップで印象に残るのは、個々の記事の内容だけではありません。
「なぜ、そこからそこへ移動したのか」というつながりです。
たとえば、ポップコーンからトウモロコシへ進むのは自然です。しかし、その先で農業機械に入り、消防車、建設機械、タイヤ、バイクレースへ向かう流れは、最初から計画して作れるものではありません。
一つひとつの移動は普通なのに、長くつなぐと妙な物語になります。
1日2クリックだから続けられた
1日に2回だけなので、数分で終わります。
もっと読みたい日でも、基本的には2クリックで止める。少し物足りないくらいで翌日に残すことで、無理なく続けられました。
毎日の記録も自動投稿ではなく、すべて手動です。同じ形式の投稿を続けていたためか、途中でBOTと判定されそうになることもありました。
何かを学び切る必要も、感想をきれいにまとめる必要もありません。昨日の続きからリンクを2つ選び、記録するだけです。
「毎日、何か有益なことをしなければならない」と考えると疲れます。Wikiトリップは、役に立つかどうかを気にせず、自分が気になったものを選ぶ遊びです。
Wikipediaは、自分の興味を映す地図だった
始めたときは、Wikipediaのリンクをたどったらどこへ行くのかを見てみたいだけでした。
3か月続けて分かったのは、見えてくるのはWikipediaの構造だけではないということです。
どのリンクを選ぶかには、その人の経験、記憶、趣味、生活が表れます。
私の場合は、音楽、Apple、車、機械、モータースポーツが何度も現れました。別の人が同じ記事から出発しても、きっとまったく違う場所へ着くはずです。
Wikiトリップは、知識を増やすための勉強法というより、興味のままに遊んだ結果から自分を知る方法でした。
目的地は決めない。
役に立つかも考えない。
その日に気になったリンクを、2回だけ押す。
それだけで、昨日の自分からは想像できなかった場所へ行けます。
次はどの記事から出発し、どこへ着くのでしょうか。
Wikiトリップは、まだ続きます。
日々の2クリックは、X(@2clicks_wiki)で記録しています。
